面白いかというと、まぁ、面白い。
今までにハマった漫画と比較すればトップテンにも入りませんが、15巻までに完結した漫画の中で格付けをしますと、上位であると思います。まだ完結していませんが・・・13巻くらいで終わるんじゃないですかね。
ネット上の評価は様々ですが、私個人としましては、順当な進み方をする漫画だと思っています。読者を裏切らないという点では王道と言えるでしょう。
大きなキーワードは「普通の生活」。普通の生活とは好意の中で成立し、その逆は殺意であります。デンジ自身も序盤に話していましたが、出会った女性はみんな彼を殺そうとします。普通ではない生活。
このデンジの欲求は基本的に異性へ向けたものでしたが、実際に「普通の生活」を提供したのは同性の早川アキ。
この早川ね。うん・・・。
早川はデンジと対象的なキャラクターで、とても上品です。精神的な強さも持っているし、情も深い。同じなのはマキマさんへの好意だけで、それ以外は何も似通いません。
これに信用ならないパワーとの3人で同居がなされます。その後間もなくして8階編へ入るわけですが、驚くほど早川は彼らへ順応し、馴れ合うことが出来ています。
その結果「あれは!いたずらレベルじゃねぇ!!殺すぞ!!」といった言葉が彼から飛び出します。その前の「こいつらに背中は任せない」の段からしても相当な馴れ合いっぷりです。本気で警戒しているなら本人たちに聞かせません。
軽口で「殺すぞ」が出てくる時点で、早川は相当なストレスを短期間で溜め込んだと推察されますし、また、精神年齢が二人へ近づいています。親密さは相当なものですし、それを仕事仲間(先輩や後輩)に見せるってのも相当なこと。
この距離の詰まりかたは不思議かつ異常であります。
伏線と読むならば、マキマさんの支配による結果です。作者の不始末とも読めますが、支配説の方がしっくり来るように筋が通されています。
早川は作中でも最も悲劇的な人物となったわけですが、それでも彼の魅力が損なわれなかったのは作者の巧いところでしょう。
何が巧いのか・・・というと複合的に過ぎて考えがまとまりませんが。
第一に構成が素晴らしい。ヒーローが主人公であり、メインヒロインが主役である。これは珍しくありません。この上で負けヒロイン離脱構成を取るのが珍しい。
主人公に選ばれなかったヒロインが敵に回ったり、友人格へ落ちたり、あるいは物語から遠ざかって要所で都合よく登場する、そういったことは珍しくありません。本作はメインヒロインによる(間接的な)殺害で完全離脱を果たしますから、これは珍しい。
その上でメインヒロインは名目上の味方であり、主人公の側にあり続けます。
よくあるのは「頼りになる上司だと思っていたらラスボスだった」ですよね。「メインヒロインがラスボスだった」も決して少なくありません。
これを複合させて「恋愛対象(=メインヒロイン)で常勝無敗の上司がラスボスだった」としたのが本作でありますから、外道+外道で少年ジャンプに載せられるような話ではありません。青年誌でも「もっと設定絞って!」と言いたくなるようなごちゃつき具合。
これにオーソドックスではない負けヒロイン離脱構成を取り、15巻までに完結しそうな簡潔な物語を作った、これが巧いと思います。分かりやすい物語の破綻もありません。
簡潔だから早川の魅力は複雑になっていない。単純明快です。崇高な精神、深い情、これらを以て主人公の大きなピースとなっていた。
これまた外道というか、近年の細やかな流行りというか、典型的なヒロイン像を親友ポジに与えるんですよね。早川を女性と仮定しますとハッピーエンドへの筋書きは描きやすいはず。
早川の設定はこの様にやや複雑です。複雑な設定のために扱いづらいとも言えるんですが、これを全て統合して「家族」としたのが本誌掲載分の内容です。パワーも「ヒロイン未満・親友未満・仲間以上」の曖昧さから離脱して「家族」となりました。
これらの家族によりポチタ喪失をリフレインさせるのが目的となります。あるいは、ポチタの段階からマキマさんの掌の上であったかもしれません。
あぁ、そうなると逆ですね。マキマさんはデンジじゃなくてポチタに喪失を与えたい。「チェンソーの悪魔」への喪失ですよね。
チェンソーの魔人とするまでがマキマさんの思惑だったとして・・・仮定の上に仮定を乗っけますが、デンジがデンジであったことは誤算だったのかも。それを指して「面白い」という表現だったのかな。
となるとマフィアの孫はデンジを理想とした実験の素材であるとまた推測が立つと。沢渡アカネはマキマさんの支配下にありますから、それが相当前からである可能性は残る。
[36・37合併を読んで]
ははぁ、そこまで掘り下げないんですかい。果断な話のぶった切りをかましますな。
3人でこそ家族であったわけですから、そこが破綻するのは当然。その隙間にマキマさんが潜りこむってのは考えていませんでした。流石メインヒロイン。ヒロイン力が高い。
しかし、マキマさんくらいの格があるならばデンジの支配ってのはすぐにでも出来ることでして、マキマさんが単純にラスボスであるならば、それで終わる話です。それを変に長引かせるのはBLEACH的手法と言えるでしょう。
うーん、魔人というカテゴリの内訳が謎なんですよね。リセやデンジは人の人格がある様子ですが、ビームやパワーは悪魔の人格なんですよね。コンが「人でも悪魔でもな・・・」と言ったのは前者でありまして、マフィアの孫もこれにカテゴライズされます。(デンジは食われていませんが、マキマさんが似たコメントを出しています。)
マキマさん万能説を支持する材料はちょいちょい出てきますが・・・それなら日本に逆らう理由って乏しくなります。各国が反発した結果が人形編及び早川編ですし、絶対的な支配者として君臨しているわけではなさそう。
それならマフィアの孫はともかくリセの出来上がりにマキマさんが絡んでいる可能性はほぼほぼゼロ。リセやマフィアの孫のような魔人を作る技術は独占されていないんでしょう。
そのためにデンジの特異性ってのが各国にも理解出来ていて、それをマキマさんが手中に収めている事実はパワーバランスを大いに崩すものだと。
であると、やはり、マキマさんがデンジを支配しない理由が乏しい。早川や天使の悪魔の様に支配すりゃいいものを、デンジには人間的異性的アプローチを選択しています。これも不思議な話。
そういえばマキマさんの支配下ラインナップに魔人はありません。悪魔と、悪魔と契約した人間だけでした。魔人は支配出来ないんかな?
それならパワーは支配されていないでしょう。ビームも支配されている様子がなかった。両者ともに畏怖する様子は見られましたが。
クァンシもリセ・デンジ・マフィア孫と同じカテゴリの魔人と推察されます。この人は不老っぽいんですが、それならデンジも不老なのかな。
また、マキマさんは外見からして魔人ですよね。けれど完全な人型です。パワーには角が生えていて、暴力の魔人は複眼があり、ビームの頭はサメでした。ほぼ完璧な人型を保っている魔人はデンジ側。
完全な人型にある悪魔は登場していません。天使の悪魔以外は全て異形であり、天使にしても輪っかがあったり羽があったりと、見分けやすいパーツがあります。
ということはマキマさんの人格が人間である可能性は相当に高い。デンジと同じプロセスで成立している魔人であるならば、ラブストーリーが成立する可能性も残りますね。
[fin]